帝国の疫病 ジム・ダウンズ著 仲達志訳
- 2024年5月15日
- 書籍紹介
私にとって疫学のイメージは故サケットらが立ち上げた臨床疫学(EBMの前身)だった、、、本書を読むまでは。息ができないくらいに詰め込まれた奴隷船で疫病が拡大したり、戦争で過酷な環境におかれた兵士たちが戦死より疫病による病死が多かった。病死の原因は今から考えると黄熱病や天然痘、コレラなどだが、なにせまだ原因がわかっていない時代のこと(18世紀~19世紀なかば)。本書の目的は奴隷や植民地被支配者、先住民、捕らわれた兵士などが暴力のもとに疫学の基盤構築に使われたこと、そしてその事実が抹消されたことに光を当てることである。とてもやるせない読後感につつまれる書だ。あっ、ナイチンゲールのイメージが若干変わります。