エビデンスのない臨床は暴力、臨床のないエビデンスは無力
我々が日々携わる臨床を全てエビデンスで固めようとすると無理があります。
人を対象とした仕事なので、常に個人差が付きまとうからです。Aさんでは上手くいく治療が、Bさんでも上手くいくとは限りません。身体の反応も千差万別ですが、治療を受けたときの患者さんの感じ方も人それぞれです。Aさんがそれを受けて良かったと思うことが、Bさんでも良かったと思うとは限らないからです。
こういうことはウイリアム・オスラーWilliam Oslerが100年以上前に述べています。
医学は不確実の科学であり、確率の技術である。
Medicine is a science of uncertainty and an art of probability.
医学は科学に基づいたアートである。
The practice of medicine is an art, based on science.
しかしながらあなたが治療を受けるときに、エビデンスに基づいた説明が全くなければ不安に思うに違いありません。なぜなら担当した治療者の意見や経験だけに基づいた説明なのかもしれないからです。エビデンスに基づいた医療はEBM(Evidence Based Medicine)と言われ、マクマスター大学のデヴィッド・サケットDavid L Sackettらによって1990年代半ばに提唱されました。これは「集団での研究から得た数字を情報として用い、個人に関する決定を行うこと」で、ディシジョン・メイキングdecision-makingのときの羅針盤になってくれます。ただ「経験則や患者さんの思い、個別の事情を排して得られた客観的事実」なので、どうしても患者さんに寄り添うものにはなりません。そこでEBMで大健闘した医師たちが作り上げたのがナラティブに基づく医療NBM(Narrative Based Medicine)です。
本コースは医療情報へのアクセスの仕方や解釈の仕方にとどまらず、患者さんに寄り添うこともテーマに組み込んだ1日コースです。エビデンスで武装しながらも、患者さんにやさしく寄り添う姿を目指したいと思います。ネット接続できるノートPCやタブレット(スマホでもギリOK)が必要です。
講義内容
- ちょっと怖いけど見てみたい医学論文
- 文系のためのデータ理解
- エビデンスって何?
- EBM(Evidence Based Medicine)の世界をチラ見
- 質の高い文献にたどり着く近道
- ナラティブの重要性