エビデンスのない臨床は暴力、ナラティブのない臨床も暴力
EBM(Evidence Based Medicine)旋風が吹き荒れたときには、エビデンスを重視する若い先生と経験を重視するベテランの先生の間に敵対関係ができてしまいました。若い先生にしてみれば「エビデンスを入手・活用できないくせに」と心の中で吐き捨て、ベテランの先生は「なんにも経験していない若造が」と子供に説教をするような思いで睨みつけていました。それがどうでしょう?今やベテランでもエビデンスにこだわるようになっているではありませんか。経験にエビデンスが加わるわけですからそれは最強です。
本コースではエビデンスの入手から活用まで、ネット接続したPC(あるいはタブレット)を使って体験していただきます。また文献に直接アクセスする習慣も付けてもらいたいところです。2次情報(〇〇であると××先生が言っていた)や3次情報(〇〇であると××先生が言っていたというのを友人が聞いた)を信じている状態は決してエビデンスとは言わないからです。近い将来、生成AIが教えてくれる時代が来るかもしれません。しかしそんな時代が来る前に、積極的にエビデンスにアクセスできるようになっておきたいところです。
EBMで医学の世界に神風が吹きだすとみんなが信じました。確かに患者さんへの説明や、ディシジョン・メイキングdecision-makingのときの羅針盤として重宝したりしています。しかしEBMでは「経験則や患者さんの思い、個別の事情を排して得られた客観的事実」なのでどうしても患者さんに寄り添う姿勢を見失いがちです。そこで勃興してきたのがNBM(Narrative Based Medicine)です。ここで間違ってはならないのは、NBMはEBM反対派が立ち上げたのではなく、EBMを推進した中心派の人たちが作り出したものであるということです。本コースではそのような事情も説明しながら、“患者さんが得をする医療とは”が通底する内容を目指したいと思います。
コース内容
- 医療統計学の講義と文献検索の基礎的実習
- 文献検索の応用的実習
- EBMの講義とエビデンスレベルの高い文献へのアクセス実習
- 医学論文の構造理解とClinical Questionを自己解決する実習