アフタが教えてくれること
- 2025年4月11日
- Monthly Essay
今、アフタ性口内炎の真っ最中だ。下口唇の内面と舌の付け根の二か所。口唇は接触すると痛むものの対して支障はない。問題は舌の付け根のアフタだ。食べるときにもしゃべるときにもかなり痛みがあるので困っている。食事はゆっくり時間をかけてできるのでなんとかなる。家内も食べやすい料理をいろいろ工夫してくれるので大助かりだ。しかしゆっくり時間をかけているにもかかわらず会話が少なくなる。だってしゃべると痛いから。二人だけの食事が無言で長く続く、、、家内が気を使って話しかけてくれるが「うん」とか「ふ~~ん」としか返さない私。機嫌が悪いわけでもないし、仲が悪いわけでもないのに。
仕事柄、患者さんといろいろ話をしなければならないのがつらいところだ。痛みがあると反射的に痛みの少ない舌の動きをしてしまう。そうなると昼間なのにろれつが回っていない状態になる。ろれつが回っていないようにしゃべろうとすると痛む。今はその狭間で揺れ動きながら患者さんと話をしている。新卒歯科衛生士の練習台になるのはしばらくお預けだ。先月もアフタのため練習中止ということがあったので、「院長はどんだけアフタになりやすいんだ」と思っているに違いない。
舌の付け根にアフタができてよくわかったことがある。食事中に舌を動かせないと、口の中のあらゆるところに食片がたまってくるのだ。普段は無意識に舌をつかって処理をしているのだろう。ノックアウト・マウスという研究手法があるが、ノックアウト・タンにな
るとどういう影響がでるのかを身をもって経験したわけである。
私はふと寝たきりの高齢者の口腔内を思い出した。昔、歯科医師会の訪問歯科担当で、患者さんの自宅まで往診していたことがあり、その時の患者さんの口腔内を思い出したのである。私の場合、唾液は出ているのでまだ救われる状態だが、これで自分でブラッシングできず、口の中がカラカラで、舌の動きが悪いとどうなるかがわかるような気がした。あのときの患者さんはブラッシングの問題や口腔乾燥に加え、舌の動きが悪かったんだ。
今日も朝食後にガムを噛みながら診療室に向かう。ガムでは食片が発生しないが、噛むためには常に舌や頬でガムを咬合面に運ばなければならない、、、ので痛い。ガムはアフタの治癒状態を確認するにはちょうどいい気がする。舌のアフタは家内との会話や食事に影響するだけでなく、患者さんとの会話、新卒歯科衛生士の教育にまで影響する。舌の生理機能の守備範囲の広さに痛感する今日この頃である。早く治らないかな。