器(うつわ)と器屋さん|PEC事務局|歯科衛生士・歯科医師セミナー

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器(うつわ)と器屋さん|PEC事務局|歯科衛生士・歯科医師セミナー

器(うつわ)と器屋さん

いつの間に器に興味を持つようになったのだろう。若い頃は食べ物を入れる単なる“入れ物”に過ぎなかった。この料理にはこの器という判断には、容量や食べやすさという基準しかなかった。それがいつの間にか見栄えや季節感を下支えする基準も加わっている。

 器屋さんは作家さんと我々を引き合わせてくれる仲人だ。なので器屋さんとの出会いが器との出会いのきっかけとして大きい。私の場合、札幌円山の青玄洞がお世話になった仲人だ。そこで旭川で作陶されている工藤和彦さんの作品と出会ったのである。彼の黄粉引の片口は、料理家の栗原はるみさんの目に留まり全国的に有名になった。二層の膨張率の違う粘土を重ねることで表面にひびが入る粉引は、通常白いものが多いのだが、彼の粉引は黄色い。これは中国大陸から飛んできた黄砂が含まれるためで、その独特な黄色い粉引を黄粉引と命名したのが青玄洞のご主人だったのだ。

 工藤さんが作陶されている工房は旭川の郊外にあり、ウラヤマクラシテルという独特のネーミングでたくさんの客を引き寄せている。私もその引き寄せられた客の一人で23度足を運んだ。工藤さんとは青玄洞でお会いしたのが初めてだったが、京都で作品展をするときにもお会いしたし、ウラヤマクラシテルでは詳しい説明までしていただき、奥様とも話をする機会を得た。

 青玄洞のご主人は言葉数こそ少ないものの、的確な説明をしていただけるので大変ありがたかった。札幌に行くたびに新しい器たちが並んでいないか探索していた。偶然知り合いに会うこともあり、青玄洞は特別な空間、好きな本屋さんの好きな本棚の前に立っているときと似たような幸福感を得られる空間であった。そんな青玄洞が2018年に店をたたんでしまった。いい器のそろったレストランあたりで、あのご主人と再会できるような気がしてならない。今度は料理と器の仲人役をしてもらいたいな~。

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