眼科外来にて
- 2025年8月2日
- Monthly Essay
網膜剥離手術の経過観察のために、眼科外来を受診した時の話。あらかじめ予約していたが、30分ほど早めに到着。診察カードを読み取り機に挿入すると、受付番号とQRコードが記載された紙がプリントアウトされる。月替わりなどはマイナンバーカードで更新することになる。医者とほとんど縁がない私からすると、ずいぶんシステムが変わって便利になったものだという気持ちである。
それにしても眼科だけなのに患者数に圧倒される。自分の晩はいつ頃回ってくるのかわからないので、座って本を読みだす。いろんな検査室や診察室があって、しょっちゅうアナウンスが響き渡る。『受付番号〇×の方、△▽にお入りください』常にアナウンスされるので、気が気ではない。自分の番号が呼ばれないかどうか気にして聞いていると読書に集中できない。
そんなときに私の目の前に杖をついた男性のご老人が、診察券をどうしたらいいのか戸惑っておられるようだった。私は立ち上がってその方のところにいって、段取りを説明した。
私のように眼科だけの受診であれば、診察カードを挿入したときに表示される画面は眼科のバナーしか出てこないが、いろんな科を受診される患者さんの場合、たくさんのバナーが表示される。その患者さんもいくつかのバナーが表示されたので、タッチパネルで眼科のところをタッチして、「今日の受付番号は〇×〇×です」と言いながら紙とスロットから出てきた診察カードを手渡した。待合室は混雑しているので、私の席は誰かに取られてしまい、他に移動を余儀なくされた。
ここまでは眼科外来での単なる一コマだが、ここであることに気付いた。その男性は相当視力が弱いようで、タッチパネルを操作するときに、目をパネルの10センチくらいまで近づけないと見えないようだった。マイナンバーカードの操作をされるときも同様だ。このとき過去に読んだ本の内容がフラッシュバック。その本では視覚障害者が一番困るのは、タッチパネルと自動販売機ということだった。自動販売機は小銭を入れるところがわかれば、あとは運試し。何が出てくるかはわからないが、それを楽しむツワモノ視覚障害者もおられた。しかしながら、タッチパネルはまったくもってお手上げだ。眼科を受診される方々が視覚障害者というわけではないが、目の機能が落ちている場合が多いのだからタッチパネルで入力するのは厳しいこともあるだろう。
最近、人手不足からパッドのタッチパネルで注文するようなレストランが増えてきている。そんなレストランではスタッフの数が少ないので、席まで案内してもらうことなく「空いてる席にどうぞ」なんて言われる。これも視覚障害者にはわからない。街中のレストランではどんどん視覚障害者フレンドリーではなくなっているのである。たとえ自分が健常者であっても、いつ障害者になるかわからない。もちろん自分の親や身近にいる人が障害者になるかもしれない。障害者関係の本を読むことは自分にとって必然のような気がしている。外来待合室でイライラしながら読んでいたのはオートファジーに関する本だったけど。