記憶する体 伊藤亜紗著
- 2025年7月24日
- 書籍紹介
幻肢痛は脳が「動け」とシグナルを出してもレスポンスがないことが原因ではないかと考えられている(p.82)。とすると運動神経系が関係していることになり、基本的に感覚器官である“歯”を失っても幻歯痛が起こらないことも納得できる。先天的障害者と違って、中途障害者は健常者であった経験を持っているので「多重身体」状態であり、これが幻肢痛の引き金になるようだ。11のエピソード、12人のハンデを通じて著者の身体論の成熟を感じた。「ある人の体は、その人がその体とともに過ごした時間によってつくられています。P.270」は著者が現時点で到達した身体障害者の身体アイデンティティーの捉え方なのだろう。