リーバイスとお返し(書籍掲載済みエッセイ)|PEC事務局|歯科衛生士・歯科医師セミナー

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リーバイスとお返し(書籍掲載済みエッセイ)|PEC事務局|歯科衛生士・歯科医師セミナー

リーバイスとお返し(書籍掲載済みエッセイ)

若い頃、ジーンズと言えばリーバイス501。特にアメリカントラッドの愛好家の間では絶対的な人気だった。(私はデニムという言い方に違和感がある世代です)フロントがジッパーではなくボタンというのは“じゃまくさがり”の私向けではなかったが、きっと“やせ我慢”をしていたのだろう。足が痛いのを我慢してペニーローファーを素足で履くのに比べたら“へっちゃら”だ。ところで、リーバイスの正式名はLevi Strauss & Co.である。お尻のところに張り付けられた革製のバッチにも刻印されているのでご存知の方もおられることと思う。なのでリーバイスというのはリーバイ・ストラウスというほうが正しい。(発音はとりあえずおいといて)それではLévi-Straussというフランスの哲学者はご存じだろうか?カタカナではレヴィ・ストロースと書く。(発音はここでもおいといて)アメリカ系かフランス系かという違いはあるものの、同じ名前である。ジーンズのリーバイスが生まれたのは1853年で、哲学者のレヴィ・ストロースが生まれたのが1908年。2009年に満100歳で他界されたということは、100年間同じ名前が“かぶっていた”ことになる。私も気になって調べたことがあるのだが、結局お互い関係がないということに落ち着いた。でも同じ名前ということは昔からよく知られていたようで、『Pants of Books ?』と聞かれたりしたようだ。(ほんまかいな?)

 未開人社会のフィールドワークを通して文化人類学という方向から思索を重ねたレヴィ・ストロースはサルトルの実存主義を粉砕し、構造主義の礎を築いた哲学者として有名である。親族構造や贈与など彼の残した功績は大きいが、私の関心は贈与に関する“反対給付”の理論に向いている。何か“贈り物”を受け取るとその“負債感”にドライブされて、“お返し”をしなければ気が済まないというのは人間の本性として深く刻まれている。この“お返し”は贈り物をもらった人に返すとは限らず、他の人へのプレゼントという形で展開されることもある。そして反対給付という見方をすると、現代の生活では時間的に逆転していることが多いことに気づく。

 たとえば本を買うという行為。本来は本を読んだ人がその内容に感動、感謝し、これはお返しをしなければ気が済まないということになったときにお金を支払う。支払う額はその感動度、感謝度によって変動する。しかし実際は本の定価が決まっていて、それを支払った後にその本を読むことになる。“負債感”が“お得感”に変換されると、お返しをしたいという反対給付の連鎖が断ち切られる。そのものには価値のないお金という発明品のおかげで、時間的に逆転するだけでなく、その連鎖がちぐはぐなものになってしまった。

 偉そうなことを書いているこのエッセイの掲載本にも定価が決まっている。(たぶん)せめて“お得感”があればいいなと願うところだし、読者にお会いしたときにお褒めの言葉という“お返し”があれば本望である。ちなみに、リーバイスのジーンズも定価が決まっていて、先にお金を払うシステムになっている。

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